持倉鉱山の歴史は古く江戸時代に遡る。近代に入ると蛍石、銀・鉄・鉛・亜鉛などが採掘され、明治末から大正に掛けてが最盛期であったという。車から降り、さらに20分ほど徒歩で山中を進んだ先。ついに見えてきた。
こちら1913年に建設された煉瓦造りの事務所跡。屋根が崩落し壁だけとなった古代遺跡のような姿で残されている。
エッシャーの世界に迷い込んだかのよう。
1階部分はアーチ型窓、2階部分は四角形のデザイン。
コンクリート以外に残っているものは殆ど見当たらない。
幾何学的な美しさに惚れ惚れする。昔、TMレボリューションがPVで使用したとか。
地元の保存会により定期的に草刈りなどの手入れがされているそうだ。観光地化の動きも度々持ち上がるらしい。
実は事務所跡だけではない。目の前にある川を渡河した先に選鉱場跡がある。行ってみよう。
ジャブジャブ…。
渡河完了。水はかなり冷たかった。時期によってはヒルの盛大な歓迎を受けるらしい。
近くで見ると、カンボジアのアンコール・ワットのような佇まい。2017年に放送されたテレビ番組「世界の何だコレ!?ミステリー」でも取り上げられたらしい。
このような見事なアーチ構造は至る所で見られた。万緑の夏は視認すら困難になりそうだ。
登った先に穴を発見。
一度振り返る。この存在を知らなかったので少しドキドキしている。
奥から見上げると階段状になっていた。人が登るのは不可能であり、当時は上方から鉱石を転がしたのだろう。ならば上方にも人跡はあるはず。想像は止まらない。
隣にも穴。
断然狭いが入ることは出来た。先ほどと異なり側面は垂直だ。
別の角度から選鉱場跡と対峙する。憧れの場所に来られて嬉しい。
さらに山腹を巡るとまだまだ見所は隠されていた。熊鈴、時に爆竹を鳴らしながらの探索。
少し薄暗くなってきたので帰ろう。山は日が沈むのが驚くほど早い。
帰り際、振り返ると薄っすらと月が出ていた。この事務所跡と月はよく似合う。いつか満天の星空と共に眺めてみたいものだ。
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