深い山奥。少なくとも1976年時点で同地に確認されている。2000年前後には廃墟としての言及が見られる。
2階建てで縫製関係の工場または専門学校だったらしいが、詳細不明である。
予想以上に朽ちている。右の小窓から中を覗くと…
静謐なる空間が待っていた。
床がベコベコ。オルガンが傾いている。
鍵盤は何かを弾いているように止まったまま。
白いカーテンに緑の蔦が映える。
この部屋に静謐さを感じさせるのは、紛れもなく白いカーテンだ。
複数の縫製台ミシンが静かに佇む。
使い方はわからないが、きっと現代の裁縫はもっと機械化が進んでいるだろう。
貫禄あるクッション。
クリーナー。手入れも大切だ。この時代の機械は重厚であると共に、長持ちなイメージがある。
奥の部屋に行ってみよう。
壁の黒い点々は昆虫たちだった。こんなに仲良く整列するのか?
よく見ると展翅されたものだった。
さらに奥の部屋。床が抜け過ぎて入れない。
際ほどのフロアへ戻る。
椅子。木々に囲まれ光が入らない。実際はもっと暗いのだ。
このレトロな箱は暖房器具。ここの冬はかなり冷えるだろう。
トムとジェリーのシールが貼ってある。
オルガンのある裁縫工場。職場で有線が流れるように、メロディーを奏でていたのだろうか。
二階へ。
少し光が射している。
布団が留置されていた。地面には鯉のぼり。
別棟に行ってみよう。
食堂や宿舎があると聞く。
食堂。
崩壊していた。
宿舎。
…。
祭壇だ。今は誰もいないこの場所にオルガンが流れる人々の生活があったのだ。
一つの物語が幕を閉じた。解体の兆しはなさそうだ。ゆっくりと朽ちてゆくのだ。
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