開業時期はわからないが、1982年まで開いていた産婦人科。住宅街の中にひっそりと佇んでいる。
いい意味で裏切られた。渋みのある廃空間にテンションが爆上がりだ。
大きく荒らされることなく、当時の備品が残されている。
興奮してもいられない。天井がご覧の有り様。老朽化は必至だ。
古時計も、日めくりカレンダーも、ずっと止まったまま。25日は誰がどんな気持ちで捲ったのだろう。
建物は奥行きがあって広い。
受付の内部。
40年間の沈黙。空気が滞留している。
隣の部屋に行ってみよう。
診察室だ。重厚な銀色の体重計がお出迎え。
右の壁の図絵から、ここが産婦人科なのを思い出した。
何だか厳めしい椅子だ。
額入りの写真が飾られている。ここの院長さんではなく、権威ある方のものと推測される。
隣は手術室。
新しい命の誕生は感動的。いつもこの場所は胸がいっぱいになる。
お疲れ様でした。無言を貫く分娩台を、思わず撫でてあげたくなる。
この部屋はモデル揃いだった。
まずはこの御仁。もう廃医院では、お馴染。そして奥には…
いいじゃない…。大きなやかんだ。ストーリー性のある写真が一枚撮れたかな…。
長い長い廊下。
分娩室だ。
もう感極まってしまった。
お母さんは痛みに耐えて耐えて、新しい命を産み落とす。そんな偉業を成せるからこそ、神様は女性に長生きを与えてくれたのかな。そんな風にも思う。
隣の部屋には新生児用体重計。新たな命の重さを量ってきた。沢山の物語がこの場所で紡がれたのだ。
建物は崩壊が激しい。冬は雪が舞い込むのだろうか。
二階には入院病棟が並ぶ。
小さなベッドがちょこん。
我が子に寄り添うお母さんみたいだ。
お馴染みのドロイドくん(保育器)もここにいたか。
いつかはここも解体される。ここで産まれた人々の幸せを祈りながら、そっと旅立ってゆくのだ。
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