けっこう迷った。親切な老夫婦がノリノリで教えて下さり助かった。見当違いな森の中に入る気満々だったので、土下座したいくらい感謝だった。
会話の中で気になる点が二つあった。福井医院とは言わず、全く別の名前であったこと。解体途中だと言っていたこと。
あいにくの雨。これから起こることを物語っているよう。表札はやはり「福井」ではない。
戦後の個人医院によく見られる小窓。
何か様子が変だ。受付の裏に行ってみよう。
なんと…いう…ことだ…。薬瓶が全て片付けられている。下調べではズラリと並んでいたはずなのに…。手前の袋が全て飲み込んだのだろう。
受付の裏にはメモ用の黒板。そろばんは勘定用か。
棚にはうっすらと薬瓶が置いてあった跡。歴史が根こそぎ奪われた感じだ。
気持ちを切り替え、残っている歴史のカケラを写真に収めることにした。
大正十一年の新聞もあったぞい。
さぁ、奥の診察室へ。
気品のある体重計。ちゃんと動いたが五キロほど誤差が生じていた。
先人のブログを見たら、テーブルには極上の光景があった。医療関係の備品が、サグラダファミリアのように鎮座していたのだ。
約100年の歴史に幕を閉じる。医院長さんが椅子、体重計が助手。お互いの労を労っているようだ。長い間お疲れ様でした。
ここは住居も兼ねており、土間にはかまどがあった。たくさんの食器が散乱している。
大正~昭和初期の風情そのままに。右手の四角いコンクリはもしや…
井戸だ。屋内に井戸があるなんて、これは便利。
きちんと重ねられた茶碗。持ち主の帰りを待っているのかな。
隣の離れへ行ってみよう。
漬物石が乗っかったデカイ樽がある。
そして、ワラジ&下駄だ‼生で見られるなんて。
奥に見える農具は「唐箕」…風を起こし、籾と藁くずを選別するやつだ。米俵、未使用の薬瓶達…当時の生活がそのままに。
頑張れば二階にも行けそうだったが、白い袋が見えたのでやめた。廃墟といえども、今生の別れは寂しいものだ。
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