静かな住宅地の中に佇む個人病院。
季節は夏。周囲の草木は伸び放題で、蝉がわんさか飛び交う。
何年に開業で、何年に閉じたのか。一切が分からない病院。歯科というのも憶測。
真夏の太陽がほんのり揺らめいている。
小窓だ。
奥には鏡。
鏡というのは不思議。いつか科学が進んで映してきたものが見えるようになったら、面白い。
この建物の色合いや造りは、古い廃病院の一つの型としてお馴染みになってきた。湊海軍病院系とでもいおうか。
この奥まったスペースがお気に入り。
カーテンの朽ち具合、一級品。
長い長い気の遠くなるような時を感じさせる。
残留物は殆ど無かった。
この建物は全ての廃墟が持つ、運命の日を静かに待っているように感じる。
過ぎ去った日々を懐かしんでるようにも感じるのだ。
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