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ゆりかご医院

一軒家のような見た目。入ってみると診療所だった、という廃墟は日本各地にある。

おびただしい紙の量。当時は紙媒体が主流だった。

ここは残留物が多い。当時の様子をそのまま今に伝えるタイムカプセルだ。

ゆりかご医院。

生命の誕生はいつだって感動的。大きな産声が響き渡る。

奥の診察室へ行こう。

婦人科という性質上だろうか、敷地の中にあり通行人が窓の外を通ることはない。

この地域の健康を一手に担ってきた。

それでは

診察室の奥へ

驚いたのなんの。

古い分娩台がそのまま残っていた。

天井のわずかな隙間から光が差し込む。

色褪せたカーテンが僅かに揺れている。

かつて活躍した医療器具は沈黙して長い時を過ごしている。

きっと、ここで多くの生死のドラマがあったのだろう。何だか顔がクシャクシャになってきた。

1993年の雑誌。時が流れるのは早いものだ。

人の生活も大きく変わった。自分は変わらないよって思っても、20年前の自分と会ったら「変わったね」って言われる。きっと。

この場所は当時の空間がそのままに、現在を浮遊している。昭和の息づかいが聞こえる。

このような場所に立つと、とっても無防備で全てが新鮮だった子供の頃に戻った気分になる。少し謙虚な気持ちになれるのだ。

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